与信管理が大切なことは知っているものの、その重要性を正確に把握できていない人はたくさんいます。
実務において、どんな風に与信管理をすればいいのかもイメージしづらいところ。
そこで今回は与信管理の基礎から、実際の与信管理のやり方をわかりやすく解説します。
与信管理に失敗したときのリスクや成功させるコツもお伝えするので、ぜひお役立てくださいね!
- 与信管理とは、相手の信用度合いをもとに取引規模を決め、利益を最大化すること
- 与信管理の失敗におけるリスク
① 回収不可時の対応による損失
② 倒産 - 与信管理のやり方
① 現状把握
② 社内規定・マニュアルの作成
③ 社内規定・マニュアルに基づいた運用
④ 社内規定・マニュアルの評価・改善 - 与信管理の実施方法
① 取引の申込み
② 与信審査・信用調査
③ 与信管理内容の決定
④ 取引先との契約
⑤ 規定に基づく与信管理の継続・定期的な状況確認 - 与信管理のコツ
① 社内の情報共有をしやすい体制をつくる
② 完璧を求めない
③ 継続的に与信管理をおこなう
④ 営業部署と管理部署を分ける
⑤ 外部サービスを活用する
目次
与信管理とは?
与信管理は企業が成長していくうえで非常に大切。
その一方で、「どういう意味か」、「なぜ重要なのか」がわからない人はたくさんいます。
そこで与信管理の意味や重要性について、わかりやすく解説しますね。
相手の信用度合いをもとに取引規模を決めること
与信管理とは取引相手の信用度を決めて、今後の付き合い方を決めること。
倒産しそうな企業とは一線を置き、たくさん稼いでいる企業との関係を強めることです。
与信とは相手を信用するという意味。
多くの企業が商品やサービスの提供後、代金を受け取るまでには時間を要します。
その間に相手企業の経営状況が悪化し、支払ってもらえなくなると大きな損失に。
そういったことがないよう、取引先の経営状況などから取引規模を決めることを与信管理といいます。
与信管理の目的 = 利益の最大化
与信管理は、できるだけ利益を大きくするために行います。
経営難の取引先が多いほどリスクが高まるので、取引規模を小さくしなければいけません。
反対に業績がうなぎのぼりで、将来の見通しが明るい会社は積極的に増やす必要があります。
この判断を間違えると売掛金回収リスクを高め、利益を小さくすることに。
そういったことにならないよう適切に与信管理をしてリスクを最小化し、利益を最大化することが重要なのです。
与信管理の失敗におけるリスク
具体的にはどんなことにつながるんだろ?
与信管理に失敗すると、取り返しのつかないことになるかもしれません。
どんなリスクがあるのか、おさえておきましょう。
- 回収不可時の対応による損失
- 倒産
リスク① 回収不可時の対応による損失
与信管理に失敗すると、取引先から売掛金の回収ができないことに。
たとえば相手企業の経営状況が悪いものの、頑張れば売掛金の半分を回収できる状況もあり得ます。
ですが、相手がたくさんの売掛金を抱えていた場合には、どの企業への支払いを優先されるかわかりません。
そのため、少しでも支払いの優先順位をあげてもらうために奔走しなければならないことに…。
回収を諦め、利益を伸ばすことで補填しようとした場合にも相当な労力がかかります。
50万円の未回収が生じた場合、50万円の利益を出さなければなりません。
利益率が10%の場合には、500万円の売上を出さないといけないわけです。
このように売掛金回収不能による時間やコストの増大は重大です。
原価や製造費などを投じて提供した商品に対し、支払いがなされない状況はかなり深刻ということを、今一度認識しましょう。
リスク② 倒産
上記のように支払いが滞る企業が増えるほど、代金回収のための時間や労力が膨れ上がります。
その分、本来の業務に手がつかず、利益が小さくなる恐れがあるのです。
こういった悪循環が続くと倒産します。
与信管理に失敗すれば倒産するかもしれないと認識し、適切なやり方でリスクを抑えることが重要です。
どうやって運用すればいい?与信管理のやり方4つ
与信管理の意味や重要性がわかっても、どんな取り組みをすればいいのかわからないことは多々あります。
正しいやり方で進めなければ、利益を減らしてしまう与信管理。
適切な方法は以下の4つです。
- 現状把握
- 社内規定・マニュアルの作成
- 社内規定・マニュアルに基づいた運用
- 社内規定・マニュアルの評価・改善
ステップ① 現状把握
与信管理のはじまりは現状把握から。
現在の取引先をすべてあげて、それぞれの企業の経営状況を確認することからはじめましょう。
与信管理における現状把握に役立つ情報は以下を参考になさってください。
- 取引先の基本情報(資本金・事業内容など)
- 登記情報(債権・不動産など)
- 財務情報(貸借対照表・損益計算書など)
- 今後の運営方針(事業拡大・縮小など)
- 代表者や役員にまつわる情報(経歴・人物像など)
- 相手が希望する取引金額
上記の情報は定量分析と定性分析にわけられます。
与信管理の調査に役立つので、以下を参考になさってください。
- 定量分析:資本金や貸借対照表など、数値で表されるデータを分析すること
- 定性分析:今後の運営方針や代表者の資質など、数値化できない情報を分析すること
ステップ② 社内規定・マニュアルの作成
現状分析ができたら、ルール作りをしましょう。
「いくらまでなら売掛金の未回収に、自社が耐えられるか」を基準に決めることが重要です。
この全体の金額を明確にしてから、各取引会社との個別の取引金額を設定します。
与信レベルを数値化しておくと個別の金額設定をしやすいので、10段階にわけると良いでしょう。
このとき取引先の入金サイクルや取引金額をふまえないと、実務に沿ったルールではなくなります。
そのため、社内規定に基準の設け方を明記しておくことが大事です。
たとえば100万円の与信限度額を設定した企業の入金サイクルが3ヶ月だとします。
実際に現金を得るまでの期間が3ヶ月としましょう。
1ヶ月の取引金額が50万円だとすると、2ヶ月目には与信限度額の100万円になります。
これでは持続的な取引が成り立たないので、せっかく作った規定が活用されません。
そのため実務に沿ったマニュアルを作ることが重要です。
ステップ③ 社内規定・マニュアルに基づいた運用
社内規定やマニュアルを整えたら営業部署などに詳しく周知をして、実務に活かす準備を進めます。
実際に与信管理をはじめたあとは、社内規定やマニュアルを遵守することが大切。
たとえば、新しい顧客を獲得したときには社内規定とマニュアルに沿って与信限度額を設定し、毎回の取引に備えましょう。
もちろん与信管理に関わる異動が生じた際には、ルールを守れるように周知・教育を徹底することが重要です。
ステップ④ 社内規定・マニュアルの評価・改善
社内規定やマニュアルを運用するにあたって、実務上の問題が発生するでしょう。
そういったときにはルールの見直しをする必要があります。
新しい基準を設けたりトラブルへの対応方法を準備したりすることで、より良い社内規定にブラッシュアップできます。
社内規定に沿った運用をした結果、しっかりとリスクを抑えて利益を伸ばせたかどうかについても定期的にチェックしましょう。
実務の流れで確認!与信管理の実施方法
与信管理の実施方法は、取引先との契約前からはじまります。
どのような流れで与信管理をおこなえば良いのか、実務の流れに沿って見てみましょう。
- 取引の申込み
- 与信審査・信用調査
- 与信管理内容の決定
- 取引先との契約
- 規定に基づく与信管理の継続・定期的な状況確認
与信管理の流れ① 取引の申込み
営業部署が新規顧客を獲得してきたときが与信管理のはじまり。
この段階では、取引先の財務情報や今後の事業計画など、できる限りの情報を集めることが重要です。
営業部署は直接顧客と関わるので、定性分析の情報収集が重要となります。
財務データなどから見えない情報を収集できるよう、与信管理のマニュアルを周知しておくことが大事です。
与信管理の流れ② 与信審査・信用調査
取引先の情報収集ができたら、次は与信審査をおこないます。
先ほどご紹介した、定量分析・定性分析をもとに適切な与信レベルを設定しましょう。
情報収集が難しい場合には、調査会社に依頼することも検討しましょう。
外部サービスの活用については以下の章で詳しくご紹介しています。
先にご覧になりたい方は、以下のボタンをクリックしてくださいね!
与信管理の流れ③ 与信管理内容の決定
与信審査が終わったら社内で決裁をとり、与信管理内容の決定をおこないます。
与信限度額が適正でなければリスクと利益のバランスを損ねてしまうので、決裁は慎重に。
先ほどお伝えしたとおり与信管理に失敗すると、あとで損害が大きくなります。
時間がないからといって急いで決裁するのではなく、しっかりと与信内容をチェックしましょう。
与信管理の流れ④ 取引先との契約
与信管理内容が決定したら、営業部署によって取引先との契約を進めます。
お互いに合意できれば、契約書類を入念にチェックしましょう。
あとでトラブルにならないよう、与信管理内容にもとづいた契約になっているかどうかの確認が重要です。
与信管理の流れ⑤ 規定に基づく与信管理の継続・定期的な状況確認
契約を終えて取引を開始したら、社内規定やマニュアルに沿って与信管理を継続します。
取引先の経営状況などに異変を感じた場合には、すみやかに与信管理を見直すことが重要です。
利益最大化のポイントは?与信管理のコツ5選
以下の5つのポイントをおさえると、与信管理をおこないやすくなります。
それぞれについて、わかりやすく解説します。
- 社内の情報共有をしやすい体制をつくる
- 完璧を求めない
- 継続的に与信管理をおこなう
- 営業部署と管理部署を分ける
- 外部サービスを活用する
与信管理のコツ① 社内の情報共有をしやすい体制をつくる
与信管理は一人でできるものではありません。
営業部署などと連携したうえでおこなわなければいけないので、情報共有が大切です。
先述のとおり社内規定やマニュアルをつくっても、それが徹底されなければ意味がありません。
社内規定が適切かどうかを評価するためにも、しっかりと実施されていることが重要。
そのためにも、社内で情報共有しやすい体制を整えましょう。
与信管理のコツ② 完璧を求めない
与信管理は、相手企業の事業計画や経営者の資質などをふまえて検討するもの。
これらの情報から将来をピタリと予測するのは不可能です。
そのため与信管理を完璧にしようとしてはいけません。
与信管理をおこなうにも時間や労力が必要です。
与信管理のために営業部署の業務に支障が出ると、得られる利益を逃してしまいます。
そのため、与信管理において完璧を求めないよう注意しましょう。
与信管理のコツ③ 継続的に与信管理をおこなう
取引先の経営状況は知らない間に変わっていることが多々あります。
そのため、与信管理を継続的にチェックすることが重要です。
気付かないうちに取引先の経営が悪化し、倒産の危機に瀕しているかもしれません。
そういった兆候を見逃さないためにも営業部署との連携を密にし、継続的な与信管理をおこないましょう。
与信管理のコツ④ 営業部署と管理部署を分ける
与信管理をする際には、営業部署と管理部署を分けることをおすすめします。
その理由は、両者の目的が異なるから。
営業部署はできる限り新規顧客を開拓し、売上を伸ばさなければなりません。
そのため、与信管理に時間を割くよりも営業活動に専念したいと思いがち。
一方の管理部署では、リスクをふまえて与信管理をおこなわなければなりません。
ときには新規顧客を開拓しても、取引を断念せざるを得ないこともあるのです。
このように営業部署と管理部署の目的が異なるため、両者を混在させると運営が難しくなります。
より良い与信管理体制をつくりたい場合は、営業部署と管理部署を分けましょう。
与信管理のコツ⑤ 外部サービスを活用する
与信管理は定量分析や定性分析など、素人には難しいことが多々あります。
そのため、与信管理を外部サービスに委託することもひとつの手。
与信管理を生業とする会社に委託することで、より良いやり方が見つかることは少なくありません。
第三者に任せるからこそ、客観的な判断ができることは多々あります。
また他社に委ねることで、時間や労力を削減できることも大きな魅力。
以下のように与信管理だけでなく請求業務まで代行してくれるサービスもあります。
より良い企業運営につながる可能性があるので、検討してみてください。
画像出典:yamato-b2b-pay.com
【まとめ】正しく与信管理をして、利益を最大化しよう!
最後に与信管理について、総まとめしておきましょう。
- 与信管理とは、相手の信用度合いをもとに取引規模を決め、利益を最大化すること
- 与信管理の失敗におけるリスク
① 回収不可時の対応による損失
② 倒産 - 与信管理のやり方
① 現状把握
② 社内規定・マニュアルの作成
③ 社内規定・マニュアルに基づいた運用
④ 社内規定・マニュアルの評価・改善 - 与信管理の実施方法
① 取引の申込み
② 与信審査・信用調査
③ 与信管理内容の決定
④ 取引先との契約
⑤ 規定に基づく与信管理の継続・定期的な状況確認 - 与信管理のコツ
① 社内の情報共有をしやすい体制をつくる
② 完璧を求めない
③ 継続的に与信管理をおこなう
④ 営業部署と管理部署を分ける
⑤ 外部サービスを活用する
与信管理は、リスクを抑えながら利益を伸ばすために重要です。
ですが間違ったやり方をするとリスクを高め、利益を小さくすることになりかねません。
せっかく手間暇をかけて与信管理をしたのに、逆効果になることは避けたいもの。
正しく与信管理をして健全な企業体制に磨きをかけるため、本記事をお役立てください。
ただ与信管理は、いつもうまくいくとは限りません。
とくに与信管理をはじめた頃には、資金の回収ができなくて困ることもあるでしょう。
そんなとき、支払期限が先の売掛金をすぐに現金化できるファクタリングがあると命拾いします。
以下の記事ではファクタリングの基礎知識や、少額の売掛金でも現金化してくれるおすすめのファクタリング会社をお伝えしています。
大学卒業後に米国株取引を始める。FX、先物、CFDを経験し、2017年のビットコインの高騰を見て仮想通貨取引に参入。主に仮想通貨FXで大きな収益を得ている。長年の経験から投資・金融に関する情報を発信。現在は、Fact of Moneyの運営責任者として記事の執筆・検収を行う。