後遺症が残った場合の損害賠償について徹底解説

損害賠償の後遺症

交通事故により後遺障害が残った場合の慰謝料

交通事故の後遺障害の慰謝料の請求について

交通事故で後遺障害が残った場合、当然に、被害者は精神的な苦痛を受けます。そして、この苦痛は、当然のことながら、加害者または保険会社に、その損害の賠償を請求できます。

この、後遺症の慰謝料については、本来であれば、被害者の年齢、性別、職業、後遺障害の症状などを総合的に勘案して、決定するのが原則です。しかし、ケガの治療のための医療費等とは異なり、精神的苦痛に対する慰謝料を算定することは容易ではありません。

そのため、傷害事故の場合の慰謝料と同じように、後遺症の場合についても、慰謝料の基準が設定されています。この基準には、日弁連の基準と、自賠責保険の基準の2種類の基準があります。

後遺障害の慰謝料の基準に関する日弁連の基準

まず、日弁連の基準については、第1級の後遺障害の2,600万円~3,000万円、第14級の後遺障害の90万~120万円と、各等級ごとに慰謝料の金額が定められています。

なお、もちろん、実際の慰謝料を定める場合には、日弁連の基準を参考にしますが、後遺障害を受けた被害者の状況に応じて、交渉により、増額することも可能です。基準はあくまでおおよその目安ですから、当事者間の交渉次第で変動します。

たとえば、後遺障害を受けた交通事故の被害者が、重症で、その障害のために介護が必要である場合には、この日弁連の基準を、2割~3割程度増額した金額が、慰謝料の金額として定まる場合があります。

後遺障害の慰謝料の基準に関する自賠責保険の基準

一方、自賠責保険の基準では、第1級の後遺障害の1,100万円から、第14級の32万円まで、各等級ごとに慰謝料の金額が定められています。なお、自賠責保険の基準の場合には、第1級~第3級の後遺障害を持つ被害者に、扶養者がいる場合には、慰謝料に一定額の加算があります。

さらに、自賠責保険の基準の場合には、交通事故により後遺障害が残り、さらに、その障害のために、介護が必要である場合には、第1級1,600万円、第2級が1,163万円の別の慰謝料の基準が設定されています。この場合も、被害者に扶養者がいる場合には、一定の加算金が付きます。

「むちうち症」の場合の損害賠償は認められるか?

「むちうち症」による後遺障害の損害賠償の請求について

交通事故の被害者になると、長期間「むちうち症」で苦しむことがあります。この「むちうち症」とは、一般的には「頚椎捻挫」といいます。自動車に乗車中追突された場合に、首や背中に急激なショックが加わり、首が前後にムチのようにしなることが原因で生じる首の痛みです。

この「むちうち症」については、後遺障害等級別表には該当する項目はありません。しかし、同表の7級、9級、12級、14級の「神経系統の機能」「神経症状」という項目がありますから、後遺障害に該当すると主張する場合には、こちらの項目を利用します。

ただし、神経症状など、レントゲンに映らない「むちうち症」の場合には、痛みなどの症状がひどい場合でも、後遺障害として認定されるのは、12級や14級といった低い等級になります。

なお、後遺障害に対する損害賠償の金額は、「むちおち症」であっても、後遺障害等級別表によりますので、認定された障害等級にもとづく賠償金額が請求できることになります。

むちうち症による後遺障害の損倍賠償請求の傾向

なお、「むちうち症」にもとづいて、後遺障害による損害賠償の認定の場合、次のような傾向があります。まず、休業損害については、入院期間については全額が認められますが、通院期間については、その50%程度しか認められません。

また、通院・入院に伴う精神的苦痛に対する慰謝料についても、通常の後遺障害に対して、「むちうち症」による後遺障害の場合には、その2/3程度しか認められません。

さらに、治療が長期化した場合でも、事故後、12ヶ月から15ヶ月が経過した時点で、医師の症状固定化の判断がなくても、自動的に、後遺障害の有無の認定が行われます。

後遺障害による苦痛に対する慰謝料については、後遺障害別等級表上の障害等級にもとづいて、決定されます。これについては、一般の後遺障害と「むちうち症」による後遺障害に関して、差異はありません。

最後に、逸失利益の計算に関して、「むちうち症」による後遺障害の場合には、労働能力喪失期間が、通常の後遺障害よりも短く認定される傾向があります。「むちうち症」による後遺障害の場合には、通常の後遺障害よりも、被害者が受ける障害が少ないと判断されています。

後遺症の場合に請求できる逸失利益

交通事故の後遺障害による逸失利益の計算方法

交通事故で後遺障害を受けた場合、障害が残ると労働能力が低減します。この労働能力の低減による生涯年収の減少分は、逸失利益として損害賠償の対象になります。しかし、この逸失利益の賠償額の計算は、実際に発生した収入減を賠償するのではなく、あらかじめ決められた計算式により行います。

この後遺障害による逸失利益の計算は、「①基礎収入×②労働能力の喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数またはホフマン係数」という式により行います。

まず①の基礎収入については、原則として、交通事故の被害者の前年の収入により行います。18歳未満の学生、高齢者などは、前年の収入データがありませんから、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金にもとづいて、基礎収入を算出します。

次に、②の労働能力喪失率については、これは、自賠責保険の後遺障害の認定の際に利用される「後遺障害別等級表」に「労働能力喪失率表」が付属しています。この表をもとに算出します。この率は、後遺障害の等級に応じて、1級~3級までが100%、最小で14級の5%まで決められています。

最後に、③の労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数またはホフマン係数についてのべます。まず、労働喪失期間とは、67歳から被害者の症状固定時の年齢を控除した年数です。後遺障害による労働能力の喪失にもとづく労働収入の減少が見込まれる期間です。おおよそ67歳まで、労働可能として設定されています。

ライプニッツ係数とホフマン係数について

次に、ライプニッツ係数とホフマン係数についてです。これは、どちらも、将来の収入を現在の価値に修正するための数値です。この係数を利用することにより、非常に複雑な中間利息の控除の手続きを非常に簡単に行うことができます。

なお、ライプニッツ係数は、複利計算で中間利息を控除する考え方で、この係数で計算すると、被害者により有利な賠償金額となります。一方、ホフマン係数は、単利計算で1年ごとに中間利息を控除する考え方で、同じ条件で計算した場合、ライプニッツ係数で計算した場合よりも、賠償金額が少なくなります。

逸失利益の具体的な計算例について

計算例を表示しますと、被害者の症状固定時の前年の収入が700万円、障害等級が1級、障害固定時の年齢が40歳とします。この場合の、賠償金額は、ライプニッツ係数を用いた場合には、700万円×100%×14.643=約1億250万円です。一方、ホフマン係数を用いた場合には、700万円×100%×16.8045=約1億1,763万円です。

「家屋改造費、装具購入費」は損害賠償費として認められるか?

交通事故の後遺症による家屋改造費の賠償請求について

交通事故の後遺症で、身体に障害が残った場合、住宅をバリアフリー構造にしたり、車椅子等の装具を購入することが必要になります。このような費用は、交通事故がなかったならば、発生しない費用なので、原則として、被害者は、それにかかった費用の賠償の請求ができます。

家屋改造費として認められるものは、交通事故の被害者が事故による負傷にもとづく障害を持ち、かつ、保険者から後遺障害と認定されてものが、障害を持ちながらも快適に暮らすために、自宅等を改造した場合に支出した費用です。

具体的には、家の出入り口、風呂場、トイレなどの設置・改造費、ベット・椅子などの調度品購入費、自動車の改造費などです。これらの費用については、実費相当額が、損害賠償の対象となります。なお、賠償できる金額は、事故の被害者が認定された障害等級に応じて、変動はあります。

交通事故の後遺症のための装具などの購入費の賠償請求について

また、交通事故による障害の程度によっては、義足、車椅子、補聴器、義眼など、日常生活を送る上で、必要とされる装具などの費用の賠償請求ができます。もちろん、なんでもかんでも請求できるわけではなく、事故の後遺障害と、装具の購入に因果関係がなければ、賠償は認められません。

なお、装具類は、半永久的に使用できるものではなく、ほとんどの場合、交換や買替が必要になります。ですから、初回の装具の購入費用だけでなく、平均余命までの装具の買替のための費用も合わせて賠償請求ができます。ただし、この費用についても、請求時から支出時までの中間利息を控除する必要があります。

家屋改造費と装具購入費の損倍賠償請求の特徴について

家屋改造費や装具購入費は、症状固定後の将来の治療費や付添看護費とは違い、交通事故の後遺障害と認定された場合には、比較的、損害賠償が認められやすいと言えます。それは、交通事故の障害と、それらの費用の支出に、因果関係が説明しやすいからだと考えられます。

なお、後遺障害については、自賠責保険の基準では、第1級から第14級までありますが、障害の程度に応じて、家屋改造費や装具購入費について、賠償の請求が認められる範囲が異なります。もちろん、重い障害が残る方が、より多くの範囲で請求が認められることは、いうまでもありません。

病状固定後の将来の治療費や添付看護費

交通事故の被害で後遺症が残った場合、将来の治療費や添付看護費は請求できるか

交通事故でケガをした場合、当然そのケガの治療を行います。ですが、医師が一とおり必要な治療を行い、これ以上、治療の効果が認められない判断すると、そこで症状は固定した状態になります。この症状固定の後、さらに、医師の治療や、付添看護等を受けた場合、その費用は、加害者や保険会社に請求できるのでしょうか?

症状固定後の将来の治療費の損害賠償請求について

症状固定後の将来の治療費は、賠償の請求ができないのが原則です。しかし、症状の内容、程度、治療の内容により、認められる場合もあります。その基準には、将来の症状の悪化を防ぐための必要性が該当します。

なお、将来の治療費は、将来に必要となる治療費を請求時に一括して請求します。したがって、将来必要となる経費については、請求時から、治療費の支出が行われると予想される時までの、中間利息を控除します。

たとえば、利息を年5分、治療費が支出されると予想される時期を1年後とし、症状固定後の将来の治療費を100万円としますと、請求できる賠償金額は、100万円/(1+0.05)=952,381円となります。

症状固定後の将来の添付看護費の損害賠償請求について

なお、症状固定後に、後遺障害により寝たきりになり、将来にわたって添付看護が必要な場合もあるかと思います。このような場合、後遺症のため寝たきり状態で常時介護が必要な状態であれば、添付看護費が損害賠償請求の対象となります。

この場合には、被害者の平均余命までの間、付添看護を受けたものと仮定した費用を、被害者または保険会社に請求できます。なお、この請求額も、将来の治療費の請求と同様に、請求時から支出予想時までの中間利息を控除します。

この付添看護費の計算基準は、看護師や家政婦など職業添付人に付添看護を依頼した場合には、その者の請求額、近親者が付添看護を行う場合には、1日あたり6,500円から8,500円となります。

後遺症の場合に請求できる損害賠償の内容

後遺症が残った場合の損害賠償請求について

交通事故により負傷した場合、その負傷が原因で、失明や半身不随といった障害が残ることがあります。これらの障害が残った上、その障害が一定の基準に該当する場合には、自賠責保険や任意保険に対して、後遺障害の損害賠償請求が可能になります。

なお、後遺障害による損害賠償の請求するためには、まず、医師が、これ以上治療を継続しても、症状が改善しないとして、治療を打ち切ることが必要です、医師が負傷の治療を打ち切ると、症状は固定化した状態と判断されます。ここで、その固定化した状態で、残った障害が、損害賠償の対象となるかどうかが判断されます。

自賠責保険の基準について

ちなみに、自賠責保険の場合には、後遺障害は1級から14級まで定められています。後遺障害による損害額は、後遺障害による被害者の生涯年収の減収分に慰謝料を加算した額となります。この金額に対し、自賠責保険の基準では、1級の3,000万円~14級の75万円までの上限が課されております。

また、介護を必要とする後遺障害の場合は、後遺障害の程度が、医師の診断書により、保険者が1級に該当すると判断し場合には4,000万円、2級に該当すると判断した場合には3,000万円となります。

任意保険呉場合の支払い基準

一方、任意保険の場合にも、それぞれの保険契約ごとに、後遺障害の等級と、支払われるべき賠償金額の上限額が決められています。したがって、医師の治療が終了し、後遺障害の状態が治癒および確定したら、その障害の程度をもとに、それに応じた等級の損害賠償金を請求してゆきます。

重要な後遺障害診断書

なお、自賠責保険により後遺障害の賠償を受ける場合でも、任意保険により後遺障害の賠償を受ける場合でも、被害者は、必ず医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。保険者は、この診断書の記載から、被害者の後遺障害が障害等級表のどの障害に該当するかを調査します。

この後遺障害の等級の認定は、原則として書面審理のみで行われています。したがって、医師に正確に後遺障害診断書を作成してもらわないと、本来の等級より低い等級であると判断され、本来受けるべき損賠賠償金よりも少ない賠償金を受けることになります。