交通事故・交通違反後の刑事処分について徹底解説

交通事故後の刑事処分

記事監修者紹介
ファイナンシャルプランナー髙橋洋子髙橋 陽子
日本生命保険相互会社にて3年半以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。
その後、2019年4月より当メディアにて保険をはじめとする金融記事の監修を務める。

少年が起こした交通事故の処分

20歳未満の者が起こした交通事故について

小型特殊、原付、普通二輪の免許は16歳以上で取得できます。また、普通自動車免許は18歳以上で取得できます。ですから、20歳未満の少年者が交通事故により、被害者を死傷させ刑事罰を受けることは十分にありえることです。

ただし、犯罪後の手続きは20歳以上の成人が人身事故を起こした場合と異なります。20歳未満の者の刑事手続は、年少事件として処理されます。

少年事件の手続き 警察から家庭裁判所まで

20歳未満の者を少年者といいます。なお、14歳未満は刑事未成年とされ、刑事責任を問えないとされています。普通は、14歳未満の者が無免許で自動車を運転して人身事故を起こすことは極めて希です。

ですから、交通事故に関する少年事件といえば、14歳以上20歳未満の者の起こした事故による犯罪行為に対するものと考えることができます。

少年が交通事故の加害者となり、人身事故を起こした場合、まず、警察官が事故の取り調べを行います。そして、供述調書、収集した証拠、また、必要な場合には事故の被疑者を逮捕して、検察官に送致します。

検察官は事件を受理し、自ら調査を行った上で家庭裁判所に送致します。成人の犯罪の場合と異なり、少年者の犯罪の場合には原則として検察官には最終処分の権限は無く、家庭裁判所の審判で被疑を受けた少年に対する処分が決まります。

家庭裁判所による審判について

事件の送致を受けた家庭裁判所は、被疑少年の調査を行い、処分を決定します。処分には、保護処分、検察官送致、知事または児童相談所送致、不処分または審判不開始、試験観察があります。

保護処分とは

保護処分には、少年が保護観察官や保護司の監督・指導を受けながら、社会内で更生を目指す保護観察、少年院に送致して矯正教育を行う少年院送致、比較的低年齢な少年が、開放的な施設での生活指導が必要だと判断された場合にはそのような施設で教育を行う児童自立支援施設送致があります。

検察官送致とは

家庭裁判所が少年が起こした事件に対しては保護処分では不適当で、刑罰を科したほうが良いと判断した場合に検察官送致を決定します。検察官送致があった場合、検察官は一定の例外を除き被疑者を起訴します。

検察官送致の対象となるのは、死刑、懲役、禁錮などが対象となる少年事件ですので、比較的重い事件が対象となります。また、一度、検察官から家庭裁判所に送られてきた事件が、再び検察官に送られますので、逆送ともいいます。

検察官が起訴すると、通常の裁判手続が行われ、有罪が確定すれば、成人の犯罪と同じように、確定判決により刑が科されます。

知事または児童相談所送致

事件を都道府県知事や児童相談所に委ねることが適当な場合があります。その時は、それらの機関に事件を送致しますが、それを知事または児童相談所送致といいます。

不処分または審判不開始

また、家庭裁判所の審判の結果、保護処分や検察官送致などがなくても被疑少年が更生可能と判断された場合、不処分の決定がなされます。また、調査のみで手続を終了し、審判すら開始しない審判不開始もあります。どちら場合も、被疑少年に処分は行われません。 

試験観察とは

最後の、試験観察とは、直ちに処分を決定せず、一定期間、家庭裁判所の調査官に被疑少年の行動を観察させ、その結果を見て処分を決めるという決定のことです。

 交通事故による犯罪を起こした少年は、原則として、以上のような家庭裁判所の審判を経て、その決定による処分を受けることになります。

交通事故の加害者に科せられる刑罰の内容

刑事裁判により、交通事故の加害者である被告人が、裁判官により、有罪と判断された場合には、判決または略式命令により、被告人に刑罰が科されます。
 

交通事故の加害者に科せられる刑罰の種類

交通事故の加害者に課せられる刑罰については、刑法や自動車運転死傷行為処罰法において、定められております。具体的には、懲役、禁錮、罰金、科料があります。

懲役とは

懲役とは自由刑の一種で刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰であります。無期懲役と有期懲役があり、有期懲役は1月以上20年以下と定められています。

懲役刑は多数の死傷者を出すような重大事故を起こした加害者に対して科せられる刑罰です。また飲酒運転、スピード違反、無免許運転、ひき逃げを伴う人身事故を起こした場合は、道路交通法違反と合わせて懲役刑を科せられる場合もあります。

禁錮とは

禁錮とは自由刑の一種で刑事施設に拘置する刑罰です。懲役とは異なり刑務作業は発生しないため、ただ拘置されるだけとなります。ただし、願い出れば刑務作業を行うことも出来ます。懲役同様、無期禁固と有期禁固があり、有期禁固は1月以上20年以下と定められています。

重大ではなく通常に過失の範囲内による死亡事故や傷害事故であればほぼ禁錮刑で処罰されます。

罰金、科料とは

罰金や科料は財産刑の一種で、1万円以上の金銭を支払う刑罰を罰金刑、1円以上1万円未満の金銭を支払う刑罰を科料刑といいます。人身事故の刑罰はほとんど罰金刑により処罰されます。

執行猶予について

裁判官が、被告人の有罪を認めて刑を言い渡した時に、裁判官の情状により、一定期間刑の執行を猶予し、その期間に罪を犯さなかった場合に、その刑罰を取り消す制度のことを執行猶予といいます。交通事故の加害者に対する刑罰についても、この制度が適用される場合があります。

ただし、執行猶予が付くためには、裁判官の情状酌量の他にも、判決の言い渡しの前に禁錮以上の刑に処されたことがない、言い渡す刑が懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金であるなど、一定の要件を満たしている必要があります。なお、執行猶予の期間は、1年以上5年以下に定められています。

交通事故の加害者に課せられる刑罰の内容

交通事故の加害者に刑罰が課せられる場合は、自動車運転死傷行為処罰法で規定される、危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪を犯した場合などです。

危険運転致死傷罪による刑罰

危険運転致死傷罪とは、たとえば、アルコールや薬物、特定の疾患の影響のある状態で自動車を運転して人を死傷させた場合、自動車の運転に関し、信号無視、制限速度を大幅に上回る状態での走行や通行禁止区域の走行、運転技術が未熟な状態での走行、などを行い、人を死傷させた場合に成立します。

人を死亡させた場合には、1年以上の有期懲役に処されます。有期懲役の上限は20年ですから、有罪となれば、最高で懲役20年の刑罰を受ける可能性があります。人を負傷させた場合には、15年以下の懲役が科せられます。懲役の下限は1月ですから、有罪となり執行猶予がつかなければ、最低でも1月の懲役は確実です。

過失運転致死傷罪による刑罰

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合に成立します。そして、この犯罪を犯した場合、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金に処されます。なお、自動車運転死傷行為処罰法には、この他にも上記の犯罪行為に類似する行為にも、それを処罰する規定が設けられています。
 

簡易裁判所による略式命令について

なお、①簡易裁判所の管轄に属する事件である②100万円以下の罰金または科料を科すことができる事件である③被疑者が同意している 以上の条件を満たす場合、簡易裁判所の書面審理のみの略式命令により、被告人に刑罰を科すことができます。

ですから、罰金100万円以下の軽微な交通事故による加害行為に対する刑事処分であれば、簡易裁判所での略式命令手続きによって、刑事罰が科されることが多くなります。ちなみに、検察官が事件についてこの手続きを求めることが、前出の略式起訴です。

交通事故による正式裁判と略式裁判

正式な裁判を求める場合

検察官は、事件の調査の結果、事故の加害者である被疑者について、事故の加害者であることに間違いがなく、また、加害行為が犯罪を構成し、その証拠も十分で、かつ被疑者に情状酌量の余地がないときには、国家刑罰権の発動を裁判所に求めます。

このことを「公訴を提起する」といいます。そして、この公訴を提起する行為を、「起訴」といいます。普通に起訴という場合には、公判請求を求める起訴のことを指します。

この起訴には、2種類あります。一つ目は、正式な刑事裁判の手続きにより、被疑者に刑罰を求める起訴です。正式の裁判は、被告側と検察側が公開の法廷で弁論をおこないますから、公判といいます。よって、これを求める起訴を「公判請求」ともいいます。

この「公判請求」による起訴を求めるのは、100万円以下の罰金または科料を科しえない事件、書面審理が不適当で公判による審理が必要な複雑な事件、以下の述べる略式命令による処分を被疑者が拒否している事件、などの起訴を求める場合です。この手続きは、比較的重い交通事故の被疑者に対して利用されます。
 

略式裁判を求める場合

一方、起訴には、公判による正式な裁判手続きを求めるものの他、より簡易な手続きで、裁判所に国家刑罰権の発動を求める手続きもあります。刑事訴訟法では、簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、100万円以下の罰金または科料を科すことができる、と規定しています。

この略式命令は、正式な裁判の場合のように、検察官や被疑者、被疑者の弁護士などによる弁論を必要とせず、書面審理のみで、発することができます。また、この略式命令は、原則として、確定判決と同一の効力を持ちます。ですから、この手続きを利用すれば、正面審理のみの簡易・迅速な手続きで、一定の刑罰を被告人に科すことができます。

この略式命令による刑罰を被疑者に科すことを、裁判所に請求する手続きを、略式起訴といいます。

ちなみに、略式起訴ができるのは以下の条件をすべて満たす場合です。

  • 簡易裁判所の管轄に属する事件であること
  • 100万円以下の罰金または科料を科しうる事件であること
  • 略式手続によることについて、被疑者に異議のないこと

上記の要件から、明らかですが、在宅起訴は、簡易裁判所に対して行いま。また、略式命令では、100万円を超える罰金・科料、懲役刑や禁固刑は科せません。ですから、比較的程度の軽い交通事故事件の被疑者が対象になります。

交通事件即決裁判手続について

道路交通法第8章で定める交通に関する刑事事件については、簡易裁判所が、一定の場合に、1日の期日で判決を出すことができる、交通事件即決裁判手続が定められております。この即決裁判で、簡易裁判所は、50万円以下の罰金または科料を科すことができるとされています。

危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪など刑法上の罪について嫌疑がある場合には、この制度は適用されません。しかし、道路交通法に違反し、同法が定める行政刑罰で50万円以下の罰金または科料を受けるような場合には、この手続きの適用を受けることがあります。

検察官による起訴・不起訴処分

検察官による起訴処分、不起訴処分

検察官は警察官から送致を受けた事件を捜査し終えたら、被疑者を裁判にかけるかどうかを決定します。この決定をすることを検察官の処分といいます。なお、この処分には、大きく分けると、起訴処分不起訴処分があります。

また、起訴処分には正式裁判を求める場合と略式裁判を求める場合があります。また、不起訴処分には、主に嫌疑不十分で不起訴処分になる場合と、起訴猶予処分がありあます。

起訴処分について

検察官が事件を調査し、被疑者が事故の加害者であることに間違いがなく、また、加害行為が十分に犯罪として認められ、また、情状酌量の余地もないと判断したとします。その場合、検察官は、被疑者対し国家刑罰権の行使を求める訴えを起こします。

このことを公訴といいます。そして、この公訴を提起することを起訴または起訴処分といいます。この起訴処分は、具体的には裁判所に被疑者を被告とする刑事裁判を開くことを求めることです。

なお、この起訴処分は、2種類あります。被疑者に対して正式裁判を開くことを要求する場合と、比較的軽微な事件の被疑者に対して、正式な手続きによらない簡略化した略式裁判を要求する場合です。

公判請求

前者のことを公判請求といいます。起訴処分という場合には、通常、この意味で使われます。通常の刑事裁判により被疑者に刑罰を科すことを求めます。公式請求となるのは、飲酒運転や無免許運転のような悪質な違反により死亡事故や重傷事故が発生し、懲役刑や禁固刑といった思い刑罰を求刑する場合です。

略式命令請求

後者のことを略式命令請求といいます。略式命令請求は以下の条件をすべて満たす場合に可能です。

  • 100万円以下の罰金または科料を科しうる事件であること
  • 被疑者が略式手続に同意していること
  • 簡易裁判所の管轄に属する事件であること

簡易裁判所に請求し、公判は行われず、書面審理のみで略式命令が下されます。しかし、この略式命令は、原則として、確定判決と同一の効果を持ち、被疑者に対し、100万円以下の罰金または科料の刑罰を科すことができます。

略式命令の対象となるのは、軽微な犯罪で、100万円以下の罰金等で済むような事件です。この手続きを求めることを、略式起訴処分といいます。
 

不起訴処分について

一方、検察官の調査の結果、被疑者を裁判にかけないと決定する場合もあります。検察官がこの決定をすることを不起訴処分といいます。不起訴処分になるのは次の場合です。

  • 起訴猶予処分の場合
  • 嫌疑不十分の場合
  • 嫌疑なしの場合
  • 訴訟要件を欠く場合
  • 事件が犯罪を構成しない場合

まず、起訴猶予処分とは、被疑者が犯罪を行い罪に問えるのは明白だが、被疑者の年齢・境遇・犯罪の軽重・犯罪後の状況などにより、検察官が、裁判にかけることが不要と判断し、不起訴の決定をすることです。

嫌疑不十分とは、捜査の結果、証拠不十分などで、犯罪の証明が不十分な場合です。

嫌疑なしとは、被疑者が人違いであることが明白になった場合などです。

訴訟要件を欠く場合とは、被疑者が死亡した場合、親告罪につき告訴が取り消された場合、公訴時効が完成した場合です。このケースでは、事件そのものが成り立たちません。

最後の、事件が犯罪を構成しない場合とは、被疑者が犯行当時に心神喪失状態であった、犯行当時14歳未満であった、または被疑行為が犯罪とならない場合などが該当します。このケースでは、事件は成り立ちますが、犯罪が成り立ちません。

以上のような種々の理由により、不起訴処分が決まります。不起訴処分が出た場合は、事件はそこで終了します。

交通事故が発生した際の検察官の役割

検察官とは何か

検察官とは、直接、交通事故の加害者(被疑者)を取り調べた警察官から事件送致(事件に関連する「実況見分調書」「写真撮影報告書」といった書類を送る)を受け、その被疑者を起訴、あるいは不起訴することで、裁判にかけるか否かを決定する行政官のことです。検察官は、独任制の官庁で、単独でその検察権を行使します。

刑事手続きの流れ、警察官から検察官へ

警察による取り調べ

たとえば、交通事故により被害者が負傷した場合、加害者には犯罪の疑いがありますから警察の取り調べを受けます。アルコールや薬物の影響があったり、運転に必要な注意を怠った事実があれば、犯罪となり刑事責任が生ずるからです。

警察は、加害者を被疑者として、事情聴取、証拠の収集や保全を行います。また、必要があれば被疑者を逮捕します。しかし、警察官は交通事故の加害者(被疑者)を裁判にかけることができません。裁判にかけることができるのは検察官です。

警察から検察への事件送致

その後、捜査を行った警察官は検察官に事件を送致します。ここで、被疑者を逮捕している場合には、逮捕から48時間以内に検察官へ送致しなくてはなりません。逮捕していない場合には、在宅事件として被疑者を在宅のままで送致します。

検察官は警察から送られてきた「実況見分調書」「写真撮影報告書」「現場見取図」といった書類や証拠品を基礎として更なる捜査を行います。そして必要があれば警察官の協力を得て自ら取り調べた結果から、その事件の被疑者を裁判にかけるかどうかを決定します。

なお、検察官の捜査に対しては、警察官の捜査に対する場合や、裁判の場合と同じように、被疑者には供述拒否権が与えられています。ですから、検察官の取り調べに対して、自己に不利益な一切の供述を行わないことも可能です。

起訴・不起訴の決定

検察官は、被疑者を裁判にかけるか否かを決定します。この決定は、原則として、警察官が被疑者を調べた調書や警察官が収集した証拠によります。しかし、必要に応じて、検察官も自ら捜査することがあります。

裁判にかける決定をした場合を起訴といい、裁判にかけない決定をした場合を不起訴といいます。この起訴処分には、公開の法廷で裁判を開くことを請求する公判請求と、書面審理のみの裁判を請求する略式命令請求の2種類があります。

拘留が必要な場合

なお、被疑者を逮捕した場合で、直ちに起訴する場合を除き、起訴か不起訴かを決定するために、さらに被疑者を拘束したまま取り調べることが必要な場合、送致から24時間以内に検察官が裁判官に対し拘留を請求します。裁判官が拘留の必要を認めると、原則10日間、最大で20日間の拘留を認める拘留決定を行います。

拘留が必要な場合とは、被疑者が住所不定であったり、逃亡や証拠隠滅を行う可能性があったりする場合です。

拘留決定があると、その決定された期間、検察官は被疑者を拘留することができます。その間に必要な捜査を行い、起訴・不起訴を決めます。ただし、20日間を超える拘留は認められておりませんから、その期間内に起訴しない場合には、検察官は、被疑者を釈放しなくてはなりません。

不起訴となる場合

警察官から送致された事件が不起訴となる場合には、被疑者が人違いである場合、犯罪時に心神喪失状態にあった場合、証拠不十分の場合、公訴時効が完成した時などです。

また、被疑者が犯罪を行ったことは間違いないが、深く反省しており、犯罪後の状況によっては追訴を必要としない場合には、起訴猶予処分とします。検察官は、これらのことについて判断をしなければなりませんから、警察官の捜査に加えて自ら捜査を行う必要がある場合もあります。

交通事故を起こした際に科せられる刑事責任について

交通事故の刑事責任について

交通事故を起こした場合、刑事責任、民事責任を問われ、また、行政処分を受けます。このうち、刑事責任について考えます。刑事責任とは、刑法で定める犯罪を犯した者が国家が与える刑罰を受ける責任ことです。刑法では次のような行為を犯罪と定めています。

  • 自動車の運転に必要な注意を怠り、交通事故を起こし、人を死傷させる行為
  • アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を運転し、交通事故を起こして人を死傷させる行為

また、刑事責任には、刑法によるものの他、道路交通法などの行政法に違反する行為が行政上の目的や社会的法益を侵害する場合に、刑法に定める刑罰を科する行政刑罰も含みます。この行政刑罰は、原則として刑法総則が適用され、通常裁判所で刑事訴訟法に定める手続きにより科されます。

交通事故により刑法で罰せられる行為

さて、交通事故を起こした際に、刑法にもとづいて罰せられる行為は、主に2つあります。一つは刑法211条2項の過失運転致死傷罪、もう一つは刑法208条の2の危険運転致死傷罪です。

過失運転致死傷罪

まず、過失運転致死傷罪から説明します。刑法211条2項では以下のように規定しています。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

かつては、交通事故で人を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪が適用されておりました。しかし、この罪名が適用される事件のほとんどが交通事故に関するもので、また、交通死亡事故の急増を受け、自動車の運転に関する業務上過失致死傷罪が新たに設けられ、同時に、その罪に科される刑罰も加重されました。
 

危険運転致死傷罪

 交通事故を起こした者に対して、刑法が適用されるもう一つは、刑法208条の2の危険運転致死傷罪の場合です。刑法208条第1項では、アルコールまたは薬物を服用した状態で交通事故を起こした場合の罰則を定めています。

1.アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、またはその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も同様とする。

第2項では、信号無視、極端な制限速度違反、通行中の人に対して自動車で異常な速度で接近し死傷させた場合の刑罰について規定しています。

2.人または車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号またはこれに相当する信号をことさらに無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

なお、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪は、刑法から平成26年5月に施行された自動車運転死傷行為処罰法に引き継がれました。現在、それらの犯罪は刑法ではなく、自動車運転死傷行為処罰法により、罰せられます。
 

交通事故により道路交通法で罰せられる行為

人を死傷させなくても、交通違反をしたり、事故で他人の住宅などを損壊した場合、道路交通法により処罰されます。同法による処罰は行政刑罰ですから、刑法総則が適用され通常裁判所で刑事訴訟法に定める手続きにより科されるため、結局は刑法による刑罰を受けるのと同じことになります。

なお、軽微な違反については交通反則通告制度により、反則金を支払えば警察による裁判所への公訴を免れ、または家庭裁判所による審判を免れることができます。

過失建造物損壊罪

道路交通法116条においては、過失建造物損壊罪について以下のように規定しています。

自動車運転者などが、業務上必要な注意を怠り、または、重過失により、他人の建造物を損壊したときは、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処する

また、同法119条では、道路交通法で定める「信号に関する規定」「踏切の通過の規定」「安全運転義務の規定」など、15項目にわたる規定に違反したものは、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処すると規定しています。